参考資料)イギリスのダンス状況について

ダンスの力・可能性について

イギリスにおいては、ダンスの力・可能性について様々な側面から整理・編集され、出版がなされている。下記はその一例である。このように出版物として流通することにより、社会に広く議論の場を提供している。
『Dance Teaching Essentials –published by Dance UK』 より抜粋 翻訳:JCDN

産業的力として

 

1) ダンスは生きるためにある

ダンスは、生活に楽しみを与えてくれる。関わり方は様々であるが、ダンスアーティストとしてでもダンサーや観客としてでも、ダンスを楽しみとして享受することができるのである。

2) ダンスは進化し続ける芸術である

1970 年代に比べると、今日では非常に多くのカンパニーが活動している。ダンスの観客は他のどんな芸術にお

ける鑑賞者よりも、成長の速度が非常に速い。毎年、105万程の人がプロのダンスアーティストとして活動して

おり、プロではない人もその多くがレクリエーションとしてダンスをしている。

3) ダンスは一つの産業である

ダンサーは安定性こそないが、列記としたひとつの職業である。またダンサーのみならず、プロモーターやマネージャー、制作や経理、マーケティングスタッフ、資金提供者、ライターやテクニカルスタッフ、またセラピストなど多くの職業を生み出すものである。

4) ダンスはコラボレート(共同製作)の可能性を持った先鋭的な芸術である

ダンスアーティストは、音楽家と、デザイナーと、ビジュアルアーティストと演劇とオペラと映画と、様々なものとコラボレートの可能性がある。また同時にダンスはエンターテイナメントとしても一つの形であり、同時に創造的な産業でもあるのだ。今日のデジタル産業の発展はダンスとの新しいコラボレーションの可能性をみせはじめている。

身体的・社会的な力として

 

1)身体的な健康と適応力

・ 全身の機能の向上、身体的な強度、スタミナ、柔軟性、瞬発力の向上。

・ 身体的な安定感を身につけ、それをコントロールする力を得る。

・ 身体がどのように動いているのかを理解し、健康な状態と適応力を維持するために、適切な生活習慣を心がけるようになる。

・動くことが楽しいと思うようになる。

2)文化的な側面へのアプローチ

・ 文化の多様性を発見する入り口となる。

・ 異文化に対する接し方を学ぶ。

・ 文化的価値観や伝統が、いかに多様かを実際に体験することができる。

・文化的なものがいかに移り変わってきたか、また私たち自身が変化させてきたかを学ぶことができる。

3)アーティスティックで美学的な理解と観賞力

・ 核心となるような、基礎的で、美学的な訓練の重要性を学ぶ。

・ 自分の考えを、自分なりの方法で形にして表現し、他者とコミュニケーションを図る力を身につける。

・ 運動学的な知識を習得し、身体に関する知識を深められる。

・ 芸術を形として呈示したり、一から作り上げたり、鑑賞したりする力を伸ばすことができる。

・ 他の様々な芸術とコラボレーションを図るきっかけとなる。
・ 創造性を学び、創造的な思考方法や行動が取れるようになる。
・ 芸術作品への理解を深める。
・ 客観的で深い洞察力を以って物事を見つめられるようになり、また事実を伝達する力や批評的な判断を下す力を身につける。
4)自分自身、また社会への理解と対応力
・ 様々な感情や価値観、考え方を表現する方法にどのような形があるのか、よく考えるきっかけとなる。
・ 他者とのコミュニケーションを実践する機会となる。
・ 何かを達成することにより、自分自身に対する自信と価値を見出すことができる。
・ 他者との共同作業を実際に経験することができる。チームとして作業する場合には、リーダーシップをとる
術を学ぶことができる。
・ フィードバックをしあうことを学ぶ。
・ダンスや他の芸術に対する職業的な選択の幅が広がる。
5)習得力
・ 学ぶことを学ぶ。
・ 動作の定型を作り出したり、繰り返しを行うなど、身体的動作を介してよりよく記憶するために方法を身につける。
・ 言語による、また同時に言語に頼らないコミュニケーションの仕方を身につける。
・ 問題解決のための考え方を学ぶ。
・自分の学習の仕方や行動の仕方をよりよく見直すきっかけとなる。
6)新たな言語能力の展開
今日私たちは、単なる読み書きの手段以上に、言語的発想に頼って生きてきている。ますます多くの状況で、
私たちはビジュアル情報までを、いとも簡単に文字的に解釈して生活している。例えば、広告を見て、そこか
ら意味や示唆するものをたやすく“読みと”っているし、商標や象徴的な名を考え、物事に“名付ける”ことにも
非常に長けている。
 ここで、身体についても、同様に言語的な観点から見直してみよう。誰もが経験していることであろうが、私
たちがボディーランゲージと言っている多くの身体動作、例えば立ち居振る舞い、ジェスチャー、体のこわばり、顔の表情などから、個人的感情や社会的な立場などを“読み”とって日常生活をしている。このように、身体
言語から個人的な感情や社会性を表現し、また読み取らなくてはならない場面は、21 世紀にはますます増えてくるであろう。
言うまでもなく、ダンスはこのような身体的言語の確立に、非常に有効にはたらくであろう。ダンス教育の中に
は、特に身体の動き(ダンス)を言葉として読んだり書いたりするものがしばしばある。また、ワークするにあたって、動きの中あるいは動きを介してコミュニケーションを図ろうとする試みが集中して行われる。また、ダンスは他の芸術や日常生活と様々な点で接点を持ち得るので、映像美術や社会的なコンテクストの中でどのように立ち居振舞えばいいのか、あるいはビジュアルアートにおいて、その形態や呈示の仕方をいかに工夫するかなどに、ダンスを通して身につけた動きに対する感覚を、即座に応用することができるのである。ダンスを介して人々は、動きを通じた表現力や解釈力を身につけ、様々な角度から物事を見つめ、動きを“読める”ようになるのである。その動きがたとえ感情的な表現だとしても、何の装飾もない素の動きだとしても、説明的な形をとっていたとしても、あらゆる形の動きを“読める”ようになるのである。
≪参考資料≫
Dance contacts list edited by: Art Council / April 2004
Dance Teaching Essentials published by: Dance UK / 2002
21 st CENTURY DANCE published by Art Council / 2001
Interviews of Chistopher Thomson from the place / 2004
イギリス・コミュニティダンスの現状視察 報告書
2007年6月24日〜30日
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98年から3年間の準備期間を経て、01年京都にて設立。全国のコンテンポラリーダンスの環境整備と、ダンスの持っている力を社会の中で活かし、子供から高齢者まで日常生活の中でダンスに触れる機会を創ることを目的に活動する。2008年「DANCE LIFE FESTIVAL」を皮切りに、日本におけるコミュニティダンスの普及事業を本格的に開始。学校や地域、福祉分野へのアーティスト派遣コーディネートを全国にて行う。ほかに、「コンテンポラリーダンス新進振付家育成事業」「三陸国際芸術祭」などの事業やコンテンポラリーダンスの統括団体としての活動、講演や執筆など、ダンスと社会をつなぐ様々な活動を行っている。2006 年国際交流基金地球市民賞、2015 年京都市芸術振興賞、2018 年京都はぐくみ憲章はぐくみアクション賞(こちかぜキッズダンス)、2020 年サントリー文化財団地域文化賞(三陸国際芸術祭)、令和4年度文化庁長官表彰。

 

2014年7月22日
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