Nick Doddsさん(Chief Exective)

英国のコミュニティダンス視察 11 『Brighton Dome and Festival』

            

〔視察内容〕
Nick Doddsさん(Chief Exective)
による活動説明と3つのパフォーマンススペースの見学。

■ドーム・コンサートホール
一番大きな公演スペース。客席もぐるっと取り囲むようなクラシックな雰囲気。1800 人収容。名前からもわかるように音楽の催しが多いが、ダンスの公演も、年間30ほど行われ、そのうちクリスマスの時期のクラシックバレエ公演以外は、ほと んどがコンテンポラリーダンスの公演。舞台が小さく、袖もほとんど無く、フライも無いが、コンテンポラリーダンス公演にはあまり困らない。リチャード・ オーストン カンパニー、ランダムダンス、などイギリス国内でも有力なカンパニーの公演に加え、海外からの公演も行っている。また、プロのダンス公演のほ かに地元住民に向けた催しや教育目的で行う催しも多い。視察日は地元の子供たちが明日の公演に向けてリハーサルをしていた。


■コーン・エクスチェンジ
完全にフラットになる、縦長の建物。中規模のダンスカンパニー用に最適。

ダンスで使用する場合はたいてい建物の一端に座席を階段状に320 席作り、真ん中あたりに床の高さの舞台を取ることが多い。そのセッティングで今年のフェスティバルではベルギーからのカンパニーLes Ballets C. de la B.が公演した。いろいろな催しに柔軟に対応できるスペースなので、コミュニティーダンスや参加型のダンスにもよく使われている。また、貸し館としての利 用頻度も高く、大きな収入源にもなっている。視察日は麻酔科医学会用に準備中だった。

 

■パビリオンシアター
 ここも完全にフラットになるスタジオシアター。引き出し式の座席セットがあり、それを使うと200人収容。ロックコンサートなど立ち見の場合は350人収容できる。ワークショップに最もよく使われるスペースで、視察日は大人用サーカスワークショップが行われていた。

 このドームを運営するのはNPO法人Brighton Dome。

 常勤のフルタイムスタッフは75人、イベントごとのパート従業員が225人。毎年5月にこのドームをメイン会場とした、3週間の「ブライトン・フェスティバル」を主催する。それ以外の時期はこのドームをアートセンターとして切り盛りする。

 

ブライトン・フェスティバル 
41 年間続く、イングランド最大のアートフェスティバル。3週間に200のありとあらゆるジャンルのアートが見られる。期間中はブライトンの町全体がお祭り騒 ぎになり、イギリス全土はもとより、世界中から50万人が訪れる。毎年なるべく多くの新作を創作、発表できる場にしたいと思っているとニックさん。このす ばらしい劇場を持ちながら、屋外でのサイトスペシフィックな催しがだんだん有名、人気になってきており、そこに重点を置くようになってきたそう。

 

アートセンターとして
 
メインの劇場が音楽ホールなので、催し物も音楽が中心となっている。その次にダンス、演劇は公演スペースの関係からそれほど数は多くない。貸し館としての公演や催しも含め、年間で600のイベントを行う。

建物は200 年の歴史があり、もともとは皇族の持ち物で、コンサートホールは馬小屋、コーンエクスチェンジは屋内の乗馬練習場だった。もともと劇場用に建てられた建物 ではないので、管理に非常にお金がかかる上に、いつも何かの催しが行われており、経営は複雑を極める。5年前に大規模な改修工事が行われ、今のこのような 美しい姿に。街の誇りとして、住民からの支持も厚い。

運営資金は30%がアーツカウンシルや地元自治体からの助成金で、70%がチケット収入や貸し館収入、バーの売り上げから。

 

[視察日]2007年6月24日~30日

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98年から3年間の準備期間を経て、01年京都にて設立。全国のコンテンポラリーダンスの環境整備と、ダンスの持っている力を社会の中で活かし、子供から高齢者まで日常生活の中でダンスに触れる機会を創ることを目的に活動する。2008年「DANCE LIFE FESTIVAL」を皮切りに、日本におけるコミュニティダンスの普及事業を本格的に開始。学校や地域、福祉分野へのアーティスト派遣コーディネートを全国にて行う。ほかに、「コンテンポラリーダンス新進振付家育成事業」「三陸国際芸術祭」などの事業やコンテンポラリーダンスの統括団体としての活動、講演や執筆など、ダンスと社会をつなぐ様々な活動を行っている。2006 年国際交流基金地球市民賞、2015 年京都市芸術振興賞、2018 年京都はぐくみ憲章はぐくみアクション賞(こちかぜキッズダンス)、2020 年サントリー文化財団地域文化賞(三陸国際芸術祭)、令和4年度文化庁長官表彰。

 

2014年7月8日
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