事務局より - 英国のコミュニティダンス視察 07 『Greenwich Dance Agency』

英国のコミュニティダンス視察 07 『Greenwich Dance Agency』

カテゴリ : 
英国のコミュニティダンス視察より
執筆 : 
cdj 2011-6-12 13:10

インタビュー Mr Brendan Keeney (Director)

    

−歴史について

「グリニッジ・ダンス・エージェンシー」(以下GDA)は、1993年に始まった。
1980年代にグレアム・デブリンによるレポート「ステッピング・フォーワード」の中で、「いろんな芸術のかたちがある中で、なぜダンスは音楽や演劇のように社会に大きく開かれていないのか?」ということについて書かれた内容のものがある。

「一番の理由は、ダンスにはインフラ(経済的基盤)が無い。音楽はコンサートホール、演劇は劇場、ビジュアルアートは美術館・ギャラリーがあるが、ダンスはそんな既存の小屋を借りて表現しないといけない存在であることが多きな原因ではないだろうか。」といったことが書かれているが、このレポートについてアーツカウンシルがダンス関係者を巻き込んで「ダンス評議会」を設け協議をしはじめた。

評議会では、まず、インフラが無いことをマイナスのポイントではあるが、ある種のチャンスになるのでは?というところから、ダンスの将来性を探っていった。そこから21世紀の芸術の施設を創造していくと、大事なこととして、アーティストが、コミュニティーに基盤を置いてコミュニティーと共に活動し、また、観客は受動的に単に鑑賞するだけでなく積極的に参加することが必要だ、ということになり、「ナショナルダンスエージェンシー基金(national dance agency development fund)」(以下NDA)が創設され、それがダンスの経済基盤となった。ダンスの組織も地域に似合ったかたちでさまざまであるべきで、柔軟な解釈がなされるよう「ダンス・エージェンシー」と名付けた。また、場所については、全ての地域に施設がある必要は無く、学校や劇場がもともとあって、そこで、プロのアーティストが積極的に活動しているところが面白いと感じた。例えば、イギリス南西部(South West England)とロンドンでは、コミュニティーでのニーズが違う。そういった場合、ダンス・エージェンシーは施設でなく、事務所だけも良いのでは、など、地域によってさまざまなあり方が考えられる。

GDAのこの建物は、もともとグリニッジ区の区役所として使われていた建物で、文化財指定されている歴史的建造物。GDA初代ディレクターのリチャード氏は、隣の区、ルイシャム(Lewisham)区で、ダンスのワークショップを開催していて、このビルが閉鎖されることを聞いた。リチャード氏は、区役所の人でダンスの可能性に興味を持ってくれた人たちと話をし、プランを練った。この文化財指定されている建物の閉鎖には課徴金(92年時で年間10万ポンド:約2600万円)がかかる上、閉鎖後の管理にもお金がかかる。しかし、慈善的活動や、NPOの活動に使用されるならば、課徴金は支払わなくて良くなる。そこで、リチャード氏は、この建物と10万ポンドを元に、ダンス・エージェントの運営について、アーツカウンシルに相談しNDAの協力を頼んだ。


GDAの活動について

今我々がやっていることは、リチャード氏がアーツカウンシルとの条件に盛り込まれた以下の内容が基本となっている。

 
1.地域の人のためのコミュニティープログラムの実施
2.プロのアーティストダンサーの育成とサポート
3.イベント、パフォーマンスの開催

GDAが立ち上がって間もなくして、アーツカウンシルには多くのダンス企画が殺到し、資金援助のための新しい条件が設けられていった。ダンスに関しては、国を10の地域に分けてそれぞれの地域で一団体のみにNDAが資金援助を行うようになった。ロンドンについて言えば、リチャード氏もモデルとした「プレイス」という団体があったので、そこに資金が流れ、私たちの国からの資金援助は枯渇してしまった訳ですが、ただGDAは成功したということで地方からの資金の援助を得ることができたので今でも存続が維持できている。
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Q佐東:地方からのお金というのはアーツカウンシルとは別なのですか?
A:当初も今もそうですが、財源は二つあって、地方のアーツカウンシルと地方政府からです。全国のアーツカウンシルからはわずかなお金しか入ってきませんでした。ごく最近になって、すべての補助金は地方のアーツカウンシルを通して分配されなければならないということなりましたので、今では「プレイス」もわれわれと同じで地方のお金しかもらっていないので我々と変わらない。


Q佐東:アーツカウンシルからのお金も地域を通して配分されるということは、「減る」ことなのでしょうか?それともただ、地域を経由するということだけですか?
A:基本的には国から地方に分配されるので基本的には減らない。しかし、地域に分配される金額のロンドンのシェアが減ったということがあります。基本的には事務手続きの変更なだけ。



−具体的な活動の紹介                   

2年前にアーツカウンシルの資金源でもある「宝くじ(ナショナル・ロッテリー)」に、小さな団体がどのような活動をしているのかを報告する為につくられた映像を紹介。
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○キーニー氏(GDAディレクター)
CanDoCoダンスカンパニーなども練習をしていますが、とてもリラックスした雰囲気の中でクォリティーの高い作業が進行しています。

○フィン・ウォーカー:Fin Walker(振付家/ダンサー)
自分で何かを起こすことができる場所。子ども達がいろんな経験ができる。

○アクラム・カーン:Akram Khan(振付家/ダンサー)
いろんな人たちが関わっているのでダンスというより「人」による場所。

○デビッド・アジャイ:David Adjaye(アーティスティック・ボードメンバー)
アールデコ調の素晴らしい建物。こういう場所を得ること自体とても価値あることである。若い人たちがダンスを通して律することを学び、一生懸命に何かをすることの価値を見出し、パフォーマンスを楽しんでいる。短い期間でこのような変革が起こって来たことが素晴らしいことだと思う。

区全体に影響が行き渡っている。小学校中学校とプロジェクトを行い、プロのダンサーだけでなく地域の人たちとの対話が進んで行くということで協力的な役割も果たしている。もっといろんな人がダンスをみるチャンスが得られるということで貢献出来ている。
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私たちの活動は、先にご紹介しました3つの中心となる柱に基づいて事業計画をたてている。しかし、計画通りに進めるものもあれば、そうでないものもある。それが我々のような小さな組織としてのメリットで、柔軟に対応しながら運営している事業計画は時々変わるけれども「ミッション:使命」は変わらない。その「使命」というものは5〜10年のものではなくて、50年かけて達成していこうとするもの。それは、人々がダンスをみるという「見方」を変えてもらうということ。

よくダンスは、高尚なダンス、低俗なダンス、簡単なダンス、難しいダンス、などといった分けられ方をするけれども、我々が強く確信していることは、そういった分け方は無いということ。もし、子どもの頃から難しいダンスというものに馴染んでいれば、難しいものではなく、簡単なものとして受け止めることができる。抽象的なダンスで、このダンスにどう反応したらいいのかわからないと怖がる気持ちがあって敬遠されることがあるが、我々は50年かけて若者達があらゆる種類のダンスを理解できるようにしていきたい。その中にはもちろん好き嫌いは出てくるだろうが、少なくともダンスをわかってもらえるようにしていきたいと思っている。


−3本柱で具体的に実施していること

1.地域の人のためのコミュニティープログラムの実施
 フラメンコ、ブレイクダンス、コンテンポラリーなど、比較的とっかかり易いダンス教室を多数行っている。
我々の組織がダンス「センター」では無く「エージェンシー」と言っているのは、学校や、老人ホーム、ユースセンター、生活保護を受けている家庭が住む「地域」にこちらから入っていく団体であるから。数キロ離れたところでも私たちから出向いている。
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Q(櫻井):「我々」というのは?GDAに属するダンサーたちを含めて言っているのか?
A:「我々」という時は、GDAの9名のコアになるスタッフのこと。この場所をリハーサルやパフォーマンススペースとして使っている大勢のダンスアーティストたちは登録性をとっている。そして、そのコアなスタッフが登録アーティストたちのコーディネーションを行って常に30〜40名ほどのダンスアーティストと仕事をしている。

2.プロのアーティストダンサーの育成とサポート
 GDAでは、いろんなタイプのダンサーに支援を行いながら、ハイレベルなダンスのプログラムを行っている。

 まず、2つのスペースを利用した質の高いダンスプログラムやリハーサルなどを行っている。その他に、申請書類を提出しないといけない時に書き方をアドバイスしたり、オフィスが必要な場合は提供したり、さらに、パフォーマンスを上演する機会を提供したりもしています。私たちは普通のプロモーターというより、ダンサーたちの「手助け」をしていると認識している。先程の映像の中に、フィン・ウォーカーさんと、アクラム・カーンさんという振付家/ダンサーがいましたが、彼らは我々の育成プログラムで育ったと言っても過言でないアーティストたちなので、今回の映像作成に協力してもらった。彼らは、今はロイヤルオペラハウスの所属のダンサーであり、今でもここでリハーサルなどを行っている。

また、プロのアーティストの育成に成功しているひとつとして、このグリニッジという地区が、ダンスアーティストが集中している「コミュニティー」であること。というのは、この地区には、「ラバンセンター」が30年程活動していることが影響している。ラバンセンターで勉強した人たちが住宅事情の安いこの地域に、そのまま留まる人たちが多い。

3.イベント、パフォーマンスの開催
 定期的にイベントや公演を行っているが、ロンドンのダンス業界の事情もかわってきていて、さまざまな団体がプレゼンテーションするようになってきた。我々はその中でも、これまでGDAを支援してくれたダンサーと、長年我々のダンスクラスでずっと教えている人を優先している。日頃、良いダンスの先生であれば、そもそもの素晴らしいダンスアーティストであることを忘れられがち。我々は、その人たちが表現する場所を提供している。

もうひとつ、我々の特徴でもある劇場が無いが「スペース」はある。純粋に劇場向きではないものをもっと違った形でみせられるものというものをどんどんやっている。あと、最近はじめたことで、今年のはじめから月に一度の「キャバレー」ということをはじめた。基本的な考えは、コミュニティーでダンスと観客が融合していくこと。誰もが、作品のプログレス、新しい作品、誰もが親しむことができる、フラメンコサークルや子どもたちの発表など、10分間程度で何でもありな公演。プロアマ問わず上演することをはじめた。毎回チケットが完売になる程の人気。
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Q:アウトリーチを行ったりしているのか?その際受講料はとるのか?
A:場合によって違う。放課後の学生向けダンスクラブは有料。スポーツ関係と年間契約を結んだりもしている。


Q:シニアの参加者は積極的なのか?
A:浸透して行くのに時間がかかったが、年に2〜3回の開催を、1月に1回の開催に増やし、序々にクチコミで広がっていった。7年間ほどかけて地道に広がって行った。ティーサロン風に行われる「ティーダンス」が人気。


Q:GDAに関わる地元の人が増えていった原因は何ですか?
A:「キャバレー」がきっかけ。誰でも参加しやすい仕掛けが良かったのか。地元だけではなく、ダンスフェスティバルの「ダンスアンブレラ」の時期などは、ロンドンじゅうから人が集まる。
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ロンドン南西部の特徴とも言える、多人種の住民が多く、決して豊かとは言えない地域、そして、「ラバンセンター」の存在といった「グリニッジ(人口22万8100人:2001年統計)」らしい地元のアイデンティティーを持ちながら、世界的に評価を得ていきたいと考えている。

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