事務局より - 英国のコミュニティダンス視察 08 『East London Dance』

英国のコミュニティダンス視察 08 『East London Dance』

カテゴリ : 
英国のコミュニティダンス視察より
執筆 : 
cdj 2011-6-30 11:10

インタビュー Polly Risbridger(Creative Producer)


〔視察内容〕活動についての説明を受けた後、劇場見学、ワークショップ見学、DVD鑑賞

 

East London Danceについて

East London Danceはロンドン東部のストラットフォードにあるダンス・エージェンシーで、Stratford Circusを活動拠点としている。ロンドン東部は多民族が暮らす地域で、文化的に多様な背景を持つ地域である。East London Danceはロンドン東部の住民に対してダンスイベント、ワークショップを通して地域のダンスの発展のための活動を行っている組織であり、それらの活動がこの地域のコミュニティの中心になっている。プログラムの運営は9名のスタッフ及びフリーランスのダンサーとの協力体制のもとで行われている。年間予算は50万ポンド。


Stratford Circusについて

Stratford Circusは、もともとダンスの授業を行っていた大学(『NewVIC』)が、「クリエイティブ」を教壇で教えるだけでなく、実践することが必要だという考えのもとで設立した劇場である。再開発の中心地域である、2012年のオリンピック会場に近い場所に位置している。館の運営形態は、月〜水曜日までは貸館営業、木〜土曜日はアーティスティック・プログラムとして大人向けプログラムと青少年プログラムを行っている。Stratford Circusが対象としている年齢は、0歳〜94歳までであり、プログラムの人気は年々高まっている。館の運営に際しては、教育プログラムが前面に押し出され、地域住民にとっては「自分たちが参加できる」というのがこの劇場の魅力となっている。年間総予算は631,000ポンド。運営にはNewVICやEast London Danceの予算が投入されており、それぞれの組織が資金やリソースを活用して協力体制をつくりながら運営を行っている。


  


Stratford Circusの4つの戦略

1)          観客を培うこと 
⇒劇場・野外・サイトスペシフィックなイベントを実施する

2)          アーティストの育成・発展
⇒活動のサポート、精神的なサポート、様々なジャンルのアーティスト同士で協力させるプログラムの実施など

3)          子どもたち、青少年に向けた活動
⇒正規の教育制度に対応するプログラムと、課外活動に対して行うプログラムを実施。青少年が「ダンスに触れること→ダンスを続けること→ダンスに卓越すること」までを目的に、プログラムを行っている。

例)クリエイティブ・パフォーマンス・プロジェクト、サマースクール
=はじめてダンスに触れた子どもたちに、その後もダンスをする機会を提供するためのプロジェクト。ロイヤル・オペラ・ハウスのアーティストと協力して、ヒップホップやコンテンポラリーダンスなど様々なジャンルのダンサーたちが加わって実施。それぞれのジャンルのダンスを学びながら、新しいアートフォームを開いていくプロジェクトを行っている。

  
ユースダンス(『イーストロンドンダンス・ユースカンパニー』)
=対象年齢は14歳〜24歳、毎年オーディションを行ってメンバーを構成している。

4)          高齢者・大人向けのプログラム(『ミート・オブ・フェイス』)
50歳以上のメンバーによるダンスカンパニーがあり、月に1回公演を行っている。老人ホーム、デイサービスセンターでの活動を行い、体が活発でない人と劇場のかかわりを深めている。

【その他】
 他の地域のダンス組織とのネットワーキング(『ロンドン・テムズ・ゲートウェイ・ダンス・パートナーシップ』)を行い、ダンスをロンドン東部地域の再開発の波に乗せていくことを目指している。オリンピックを機に、ロンドン東部の声をダンスプロジェクトとして世界中の人に伝えていくこと、また、ロンドン西部は豊かでロンドン東部は貧しいという位置づけをダンスの力で変えていくことを目的として行われている。

オリンピック誘致に関連する活動

ロンドン東部はもともと貧しい工業地帯であるが、再開発のために資金が投入され、オリンピックが誘致された。誘致にあたっては、この地域の若い人たちの夢、前進、チャンス、進歩といったイメージを誘致作戦に取り入れた。

 
ダンス・アスレチック
学校教育にダンスを取り入れていくことを推奨した、先生向けのリリース・パックの製作(2007年秋に完成予定)

 オリンピック・リンクス
オリンピックにインスピレーションを得て製作されたダンス・フィルムで、160名の若者が参加している。もともとオリンピックをテーマにしたワークショップが行われていたところ、ワークショップが終わってもその活動を残すためにフィルムが作成された。なお、このフィルムは誘致用のみに作成されたものではなく、学校でオリンピックの認識を高めることを目的としており、出演者の家族や友人を対象に劇場で上映している。   


ワークショップ見学
〜『イーストロンドンダンス・ユースカンパニー』のワークショップ見学〜

  


・年少クラス(推定10歳前後):女子3名、男子5名、指導者3名。
ペアになり、映画のアクション・シーンのような振り付けのダンスのレッスンを行っていた。個別レッスンの後、一組ずつが発表。年齢、人種はさまざまだが、ダンスに対して真剣に取り組み、また楽しんでいる様子が伺えた。

・青年クラス(推定10代後半):女子5名、男子4名。指導者は1名。
鏡張りの壁面のある明るい部屋でレッスンが行われていた。このクラスも様々な人種の若者たちで構成されていた。個人で自主的にレッスンを行ったあと、音楽にあわせて全員で踊る。指導者が、振り付けに対して細かな指示を出し、生徒はそれらを習得しようとしていた。レッスンの途中で休憩する生徒、ある振付を繰り返し練習する生徒など取り組み方はさまざまだが、ダンスに対する真摯な姿勢と熱意が感じられた。


オリンピック・リンクスの視聴

5分版、23分版の2種類のうち、23分版のフィルムを鑑賞した。赤・黒・黄・青などの原色のユニフォームを着た、多様な人種の大勢の子どもたちが、学校、通学路、公園などでダンスを踊る。ダンスのモチーフとなっているものは、水泳、器械体操などのさまざまなオリンピック競技であり、それが大変ユニークである。カメラワークや編集も工夫されており、アート・フィルムとして充分なクオリティを持った映像だった。


視察を終えての感想

East London Danceのあるロンドン東部はロンドン中心市街地と比べて雑多な雰囲気であり、さまざまな民族の文化を感じさせる地域だった。この地域一帯は2012年のオリンピック開催に向けて再開発が進められ、地価も上りつつあるという。今回の視察では、このような多種多様な文化を背景に持つ地域のコミュニティ、なかでも若い人たちに対する活動に関して、ヒアリングの要所要所でEast London Danceのスタッフの誇りと熱意を感じた。今回の視察でもっとも驚いたことは、オリンピックの誘致にダンスを活用するという発想と、地域のイメージをダンスによって、それも若い人たちのそれによって変えていこうという戦略だった。しかも「オリンピック・リンクス」の場合、オリンピックの誘致目的のためだけに行われているのではなく、地域の人の意識をオリンピックに向けて高めていくために行われていた活動だという。オリンピック誘致が成功する・しないは別の問題として、とにかく貧しい地域をポジティブなイメージを持って変革していこうというEast London Danceの信念と実行力を感じた。日本の状況に置き換えて考えてみれば、まずダンスによって地域のイメージを変えていこう、そしてオリンピックを誘致しようという発想が生まれてこないであろうし(もし生まれたとしてもそれを実現するのは大変困難だろう)、青少年のダンスによるフィルムを誘致のプレゼンテーションのツールのひとつとして活用するという動きにもなかなか至らないだろうと思う。現在の日本でこのプロジェクトをそのまま参考にすることはまだ難しいだろうが、困難な地域における若い人たちの成功と発展に対する熱意とビジョンを持ち続ける姿勢は見習うべきものがあった。

 

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